株主提案権とは
【テレビ朝日ホールディングスに提案した議案を掲載します】
【株主提案権行使請求書】
第1号議案
1 定款の追加
株式会社テレビ朝日(以下「テレビ朝日」という)の制作番組を含め報道番組などについて政治的な権力を持つ者からの圧力、介入により、報道機関の公正報道を保ち難い疑いのある事例が過去10年以内に存在した場合に、独立の第三者委員会を設立し、調査、公表する旨の定款を追加する。
2 提案理由
2015年1月、テレビ朝日の「報道ステーション」において、コメンテーターの古賀茂明氏の発言を巡って、政権幹部からの介入事例があり、テレビ朝日が政権の意向を忖度して古賀氏及び同番組制作担当者を同年3月末に降板させたとの批判をした文献などが存在する。 もし、この事実が真実ならば、憲法で保障された放送の自由を侵害するものである。
テレビ番組が果たすべき大きな目的、役割の一つに政権に忖度、迎合しないで自主・自立の立場から放送するという使命がある。この使命に基づき、過去10年間の介入事例の存否、その経過、会社の対応について(又将来に同様の「介入」事例があった場合に)、独立の第三者委員会を設置し、調査し公表することを定款に定めることは、政治権力を持つ者の「介入」を予め防止する役割を持ち、同時に視聴者の信頼性をより高めることになる。
第2号議案
1 定款の追加
株式会社テレビ朝日(以下「テレビ朝日」という)の個別番組の放送内容については、本来は、社内の放送番組審議会において是正されるのが放送法の趣旨であるところ、放送番組審議会に機能不全又はその恐れがある場合には、独立の第三者委員会を設立し、調査、公表する旨の定款を新しく追加する。
2 提案理由
テレビ朝日の番組2023年10月7日「大下容子ワイド!スクラ ンブル」及び2024年3月1日「羽鳥慎一モーニングショー」において、放送番組審議会の委員長である見城徹氏が社長を務める幻冬舎の 書籍の宣伝、広告部分があると視聴者に疑いを抱かせる番組が報道された。 日本民間放送連盟放送基準において番組内容が広告放送と誤解されることはあってはならないし、そのようなことは民放テレビの放送の根幹にかかわる問題であると指摘されている。しかもBPOからも同種の番組については勧告も受けている。 このような個別番組の有り方は、本来は放送番組審議会において是正・検証されるべきである。しかし、同書籍の出版社社長である見城氏が委員長を務める放送番組審議会で審議が行われた形跡はない。このように放送番組審議会の機能不全が疑われる場合に、第三者委員会を設立し調査しその結果を公表する旨の定款追加は、本社の信頼性を高める。
第3号議案
1 定款の追加
(1) 株式会社テレビ朝日(以下「テレビ朝日」という)の放送番組審議会の委員の任期(更新する場合も含む)を最長10年とする(最長10年に達している委員は直ちに退任すること) 。
(2) 当該審議会の委員には「テレビ朝日」の番組制作に関与する者を選任しないこと(現に委員に就任している場合は直ちに退任すること) 。
2 提案理由
(1) 現在、委員長を務める見城徹氏は、放送番組審議会委員を約20年つとめ、委員長在籍も10年を経過しているという現状がある。特定の委員が放送番組審議会に長期間在任し、当該委員が審議会の委員長や副委員長を兼務している場合には、当該委員の発言が審議会の議論を支配する危険性があり、放送法が期待する放送番組審議会の意義、役割を果たすことが困難である。
(2) 「テレビ朝日」の番組制作に関与する個人、法人(法人の場合はその役員も含む)が委員に選任されると公平、公正、中立な立場で番組を審議することは不可能となる。
第4号議案(社外取締役の推薦)
1 前川喜平氏を社外取締役に推薦する
生年月日:1955年1月13日
所有株式数:2000株
【経歴】
1979年 東京大学法学部を卒業。文部省入省。その後、ケンブリッジ大学大学院留学。
ユネスコ代表部一等書記官、文部大臣秘書官、初等中等教育局長等を歴任。
2016年6月 文部科学事務次官
2017年1月 依願退職
2018年4月 日本大学文理学部教育学科非常勤講師
それ以降、市民の立場で教育、社会、政治などの諸問題に関して講演活動を行い、その間に様々な執筆活動を行っている。
2 同人を推薦する理由
前川氏は、事務次官として政府関係者や政治家との折衝等の経験が豊富な上、退官後の市民活動、その発言内容からも民主主義の本質や報道の自由の有り方についての造詣が深い。退官時以降の毅然とした姿勢には趣旨を貫く力があり、報道の自由のため現場で頑張る事業者や職員の方たちへの激励にも繋がる。
特に、第二次安倍政権下においては、テレビ報道への介入が続いた。例えば、政治的公平に関する高市早苗総務大臣(当時)の答弁(2016年2月8日)もその一つであり、その背後には側近政治家による異常な権力行使が存在していたことが昨年の国会において公表された。これらの問題は、テレビジャーナリズムの根幹に関わる問題である。このような憂慮すべき現状を打破するためにも、前川喜平氏を社外取締役に選任することが、テレビ朝日HDにおいても有益となる
1 株主になるには
株主は、株主総会に出席して、議題に賛成・反対の議決権を行使して 会社の運営に意見を投じるなど、株式数に応じて権利を行使できます。 株主提案権は、この株主の権利のひとつです。ただし、一定の要件が必要になります。2で説明します。
株主になるには、まず、株式を買う必要があります。
株式の買い方は、証券会社を通して買うのですが、今はネットでの購入もできます。
「株式の買い方」と検索するとわかりやすく説明されています。
まず、いろいろある証券会社の中からどこかの証券会社を決めて、そこで、目的の会社の株式を買います。
株式の売買の手数料もかかりますし、株価は上がる場合もありますが、反対に下がる場合もあるので注意をする必要性があります。
2 株主提案権とは
1 株主提案は誰ができるか?
民放テレビの在京キーテレビ局5社は株式を公開しています。株式を公開していれば、誰でも株式を購入シ株主となれます。
そして、「一定数の株式」を持った株主があつまれば株主提案ができると会社法が定めています。
2 株主提案をするとどうなるのか?
株主提案を会社に事前に申し入れると、株主総会において議題として扱われます。総会でその提案を提案者側が説明し、全株主の賛否を聞くことが義務付けられています。
3 何株持っていれば行使できるのか?
会社法第303条には、株主300個(300単元ともいう)が集まれば、株主総会において株主提案が出来ることが定められています。
4 具体的にいくら払って株を買えばいいのか?
テレビ朝日HDの2024年1月26日現在の1株当たりの株価は1752円ですので 1752円×100株=17万5200円あれば一個(単元)を購入できます。
1個(単元)の株主が300人集まれば株主提案ができますし、一人が100個(単元)の株式を持ち、他の10個(単元)の株主が20人あつまれば株主提案が可能なのです。
5 株主提案権行使の具体的な手続きは?
株主提案する為の手続は総会の前の8週間前に提案する必要があります。その提案時に株式を購入してから6か月保有している要件が必要です(会社法303条2項)
仮に今年の6月末の総会に株主提案をしようとすれば、総会の前の8週間前に、その会社の株を購入してから6か月の期間を保有していなくてはなりませんので遅くても昨年の10月半ばには株式を購入している株主でなければなりません。
新しく株式を購入する必要はなく、株主名簿を入手して昨年10月半ば前に購入している株主の方に呼びかけて300個(単元)を集めても株主提案が可能です。
6 どんな内容を提案できるのか?
株主提案出来る事項は総会での議決事項に限られています。定款の変更、追加事項は常に総会の議決事項になります。例えば、地球温暖化問題や環境権の問題などは定款の変更、又は追加として提案すれば可能となります。(ただ定款の変更、追加は過半数で可決されるのではなく、3分の2の多数が要求されます)
役員の選任は総会議決事項ですから可能です(この議決は過半数で可決されます)
株主提案の効果は仮に議決に至らない場合でも、どの程度賛成数があるか、翌年には増えていくかどうかは会社の経営陣にとっては非常に重要な関心事項になります。
7 アメリカでの株主提案権の行使 その意義
アメリカにおいて、株主提案は10%を超えると当該会社の役員としては「ベンチマーク」とて、今後の株主提案の推移に関心をよせ、それ以降も増えていくならば、仮に可決されなくても、その株主提案を一部取り入れて会社の提案に取り入れる方向で慎重に検討するとも言われています。
8 日本で行使された実例
日本でも、ある市民団体が取締役の報酬の個別開示の株主提案を行いましたが、最初の年は10%を超えた程度であったとおもいますが、5年続けて同じ提案を続けたところ44%に達した事案がありました。当時の金融庁は、この様子をみて、全員の役員の個別開示には至らなかったですが1億円以上の役員の報酬は開示するという省令を変更することで決着した事案がありました。
不祥事事件が発生していた企業に同じ市民団体が「消費者の代表の社外取締役の選任の株主提案をする」と記者会見をしたところ、会社のトップが市民団体の代表と総会前に、会社と株主提案と一緒になって「消費者の代表の社外取締役」選任の提案をして総会で可決された事例もありました。会社にとっても信頼回復のためには市民株主と対立するより、その要求を受けとめて会社の信頼回復する方を選択したのでしょう。
9 テレビ会社への株主提案権の行使、その意義は?
テレビ会社への株主提案などは、職員達がジャーナリズム精神を発揮しようと努力、工夫して番組を作ろうとしても、ともすれば、政権や強い者への「忖度」「迎合」などの声に押しつぶされ、本来有すべきジャーナリズム精神を失い、放送法の定める報道の自由が喪失しているテレビに変質される可能性があります。長い目でみれば会社の信頼をなくする行為と言えます。
その為には、直ちに可決される可能性がなくとも、視聴者の立場から、番組制作者の職員達がジャーナリズムの精神を発揮して、良い番組を制作しようと努力する動きを激励する役割を果たします。
政権、強者などに忖度する風土が、そのテレビ会社内にあれば、視聴者の声をそれらに人達に提案してする再考してもらう役割を持ちます。
株主提案は1年で終るのではなく、継続して視聴者の声を続けていくことが、会社の悪しき風土を改革、改善する一つの手段とも言えます
テレビ業界も儲ければ良いというスタンスだけで番組を作るのではなく、広く社会的な要求に合致した番組を作ることが、今こそ求められていると言えます。
(注)テレビにはNHKも含まれますが、NHKについては株主制度が法律で定められていいませんので当会は株主提案が可能な民放テレビについて激励、監視することを目的にして発足した団体です。