株主提案権とは


1 株主になるには


 株主は、株主総会に出席して、議題に賛成・反対の議決権を行使して 会社の運営に意見を投じるなど、株式数に応じて権利を行使できます。 株主提案権は、この株主の権利のひとつです。ただし、一定の要件が必要になります。2で説明します。
 
 株主になるには、まず、株式を買う必要があります。
 株式の買い方は、証券会社を通して買うのですが、今はネットでの購入もできます。
 「株式の買い方」と検索するとわかりやすく説明されています。
 まず、いろいろある証券会社の中からどこかの証券会社を決めて、そこで、目的の会社の株式を買います。
 株式の売買の手数料もかかりますし、株価は上がる場合もありますが、反対に下がる場合もあるので注意をする必要性があります。


 
2 株主提案権とは


1 株主提案は誰ができるか?

 民放テレビの在京キーテレビ局5社は株式を公開しています。株式を公開していれば、誰でも株式を購入シ株主となれます。
 そして、「一定数の株式」を持った株主があつまれば株主提案ができると会社法が定めています。

2 株主提案をするとどうなるのか?

 株主提案を会社に事前に申し入れると、株主総会において議題として扱われます。総会でその提案を提案者側が説明し、全株主の賛否を聞くことが義務付けられています。

3 何株持っていれば行使できるのか?

 会社法第303条には、株主300個(300単元ともいう)が集まれば、株主総会において株主提案が出来ることが定められています。

4 具体的にいくら払って株を買えばいいのか?

 在京の大手テレビの5社の株式は1個(単元)とは100株と定款に定めています。例えばフジテレビは2024年1月26日現在の1株当たりの株価は1727円ですので  1727円×100株=17万2700円あれば一個(単元)を購入できます。
 テレビ朝日HDの2024年1月26日現在の1株当たりの株価は1752円ですので  1752円×100株=17万5200円あれば一個(単元)を購入できます。
 1個(単元)の株主が300人集まれば株主提案ができますし、一人が100個(単元)の株式を持ち、他の10個(単元)の株主が20人あつまれば株主提案が可能なのです。

5 株主提案権行使の具体的な手続きは? 

 株主提案する為の手続は総会の前の8週間前に提案する必要があります。その提案時に株式を購入してから6か月保有している要件が必要です(会社法303条2項)
 仮に今年の6月末の総会に株主提案をしようとすれば、総会の前の8週間前に、その会社の株を購入してから6か月の期間を保有していなくてはなりませんので遅くても昨年の10月半ばには株式を購入している株主でなければなりません。
 新しく株式を購入する必要はなく、株主名簿を入手して昨年10月半ば前に購入している株主の方に呼びかけて300個(単元)を集めても株主提案が可能です。

6 どんな内容を提案できるのか?

 株主提案出来る事項は総会での議決事項に限られています。定款の変更、追加事項は常に総会の議決事項になります。例えば、地球温暖化問題や環境権の問題などは定款の変更、又は追加として提案すれば可能となります。(ただ定款の変更、追加は過半数で可決されるのではなく、3分の2の多数が要求されます) 
 役員の選任は総会議決事項ですから可能です(この議決は過半数で可決されます)

 株主提案の効果は仮に議決に至らない場合でも、どの程度賛成数があるか、翌年には増えていくかどうかは会社の経営陣にとっては非常に重要な関心事項になります。

7 アメリカでの株主提案権の行使 その意義

 アメリカにおいて、株主提案は10%を超えると当該会社の役員としては「ベンチマーク」とて、今後の株主提案の推移に関心をよせ、それ以降も増えていくならば、仮に可決されなくても、その株主提案を一部取り入れて会社の提案に取り入れる方向で慎重に検討するとも言われています。

8 日本で行使された実例 

 日本でも、ある市民団体が取締役の報酬の個別開示の株主提案を行いましたが、最初の年は10%を超えた程度であったとおもいますが、5年続けて同じ提案を続けたところ44%に達した事案がありました。当時の金融庁は、この様子をみて、全員の役員の個別開示には至らなかったですが1億円以上の役員の報酬は開示するという省令を変更することで決着した事案がありました。この事案は市民株主の株主提案が一つのきっかけになった事案です。

 不祥事事件が発生していた企業に同じ市民団体が「消費者の代表の社外取締役の選任の株主提案をする」と記者会見をしたところ、会社のトップが市民団体の代表と総会前に、会社と株主提案と一緒になって「消費者の代表の社外取締役」選任の提案をして総会で可決された事例もありました。会社にとっても信頼回復のためには市民株主と対立するより、その要求を受けとめて会社の信頼回復する方を選択したのでしょう。

9 テレビ会社への株主提案権の行使、その意義は?

 テレビ会社への株主提案などは、職員達がジャーナリズム精神を発揮しようと努力、工夫して番組を作ろうとしても、ともすれば、政権や強い者への「忖度」「迎合」などの声に押しつぶされ、本来有すべきジャーナリズム精神を失い、放送法の定める報道の自由が喪失しているテレビに変質される可能性があります。長い目でみれば会社の信頼をなくする行為と言えます。
 その為には、直ちに可決される可能性がなくとも、視聴者の立場から、番組制作者の職員達がジャーナリズムの精神を発揮して、良い番組を制作しようと努力する動きを激励する役割を果たします。
 政権、強者などに忖度する風土が、そのテレビ会社内にあれば、視聴者の声をそれらに人達に提案してする再考してもらう役割を持ちます。 株主提案は1年で終るのではなく、継続して視聴者の声を続けていくことが、会社の悪しき風土を改革、改善する一つの手段とも言えます

 テレビ業界も儲ければ良いというスタンスだけで番組を作るのではなく、広く社会的な要求に合致した番組を作ることが、今こそ求められていると言えます。

(注)テレビにはNHKも含まれますが、NHKについては株主制度が法律で定められていいませんので当会は株主提案が可能な民放テレビについて激励、監視することを目的にして発足した団体です。