テレビ報道への期待

1 テレビ報道の影響は大きい

 新聞通信調査会が2022年11月に発表した「メディアに関する世論調査」によれば、テレビ(NHK・民報)に対する信頼度は、なお高い状態にあります。


(引用:新聞通信調査会「メディアに関する世論調査」)

   簡単に見られるテレビは、映像を伴い効果的な表現ができることから、その影響力は大きなものがあります。

2 昨今のテレビは、報道機関としての役割を果たしていない

 政治や社会の出来事で納得のいかない事、残念なことはたくさんありますが、とりわけ次の三つのことはテレビに力強く取り上げてほしい事柄です。

第1番目は、安全保障政策~端的には戦争のことです。

「台湾有事は日本の有事」という言葉を用いて、安倍、菅、岸田の三代の内閣が日本をアメリカの戦争に巻き込む計画を進めています。

与那国、石垣、宮古、沖縄本島、奄美大島、などの南西諸島には自衛隊のミサイル基地建設が急ピッチで行われ、与那国、石垣、宮古の三島では戦争がおこったときの全島民避難計画が公然と議論されています。

 2022年12月閣議決定した安保三文書では、「敵基地攻撃能力」をもつことが国の方針として決定され、引き続く通常国会では、日本全土を要塞化し、高額の武器を買い付け、防衛費に莫大な予算を割き、日本を5年がかりで世界三位の軍事国家に仕立てる防衛予算確保のための法律が採択されてしまいました。

 マスメディアは、政府の情報の垂れ流しではなく、客観的な国際情勢を伝えるとともに、軍備増強の日本の行動こそが他国の危機感を高めている現状を伝えてください

 日本の行動はアジア諸国の写し鏡であるという理性的な外交の指針を示していただきたい。

 戦争は、踏み込んだら止まりません。日本はいま岐路に立たされています。


第2番目は、個人の自由の問題です。

   ① 個人の情報やプライバシーについて

 健康保険証を2024年秋までに廃止するとしたことにより、マイナンバーカードを保持することが義務とされてしまいました。このことにより、すべての金融資産についての情報、買い物に関する情報、医療情報、思想信条に関する情報が、公権力によりファイルされ、一瞬にして検索可能となります。

 カナダではトルードー首相によってワクチンパスポート制度に反対するトラック運転手と支援者の銀行口座の払い戻しが停止されるなどの乱暴な措置がとられました。(「堤未果のショックドクトリン」幻冬舎新書208ページ)

 マイナンバーカードで収集した個人情報を駆使して、非正規で身体が健康で、反政府的でない青年層に今以上の年収を保障し、ピンポイントで自衛隊勧誘への道を用意する「経済的徴兵制」の実施も、否定できない未来です。メディアは政府の方針を伝えるだけでなく、このような可能性についても、注意を喚起していただきたいです。

   ② 自由の恣意的な制限の問題

 国会の憲法審査会では、憲法を改正して閣議決定一つで法律と同じ効力を認める緊急事態条項の検討が急ピッチに進められています。曲がりなりにも市民の代表である国会で作られる「法律によらずに」、私たちの自由は政府に恣意的に制限されます。次期総選挙の結果如何では緊急事態条項を憲法に書き込む改憲案も発議されかねません。この改憲が、国民生活に何をもたらすのか、閣議決定だけで進めてよい事柄なのか、論点を提示していただきたいです。

   ③ 元ジャニーズの性被害問題や、自衛隊内や宝塚のパワハラ問題に見られるような、許しがたい人権侵害が、長期間にわたって隠蔽されてきました。

 元ジャニーズ問題では、幼い少年たちへの性加害は業界では噂としてささやかれ、マスメデイアでも公然たる秘密として知られていたにもかかわらず、被害者による捨て身の告発が海外メデイアによって報道されるまで日本のマスメデイアでは一切取り上げられませんでした。

 自衛隊内部での性加害の隠蔽や、政治家と懇意のジャーナリストの性加害を隠蔽し、捜査妨害を行なったなど、権力の歪みをマスコミは見逃してきたのです。

 一部の社会内での問題を、見てみないことにする差別的な扱いは、憲法下の人権保障の埒外の領域を認めることになります。マスコミは、そういった悪習をこそ暴いてください。

第3番目は、民主政治の実現のための方策です。

    たとえば、パーティー券のキックバックによる裏金づくり事件に現れた問題があります。これは、単に「金銭の移動の記帳漏れ」といった形式的な不備が問題となっているのではありません。記載の義務は、「政治をお金で動かす」ことを防ぐための民主主義の健全性の確保のために採用されたシステムです。

 いま、検察庁の特捜部が動いています。マスコミ、特にテレビは自民党派閥の施設への立ち入り映像を伝えるだけでなく、この不透明なお金の移動が、民主主義を壊してしまう影響力をもつ、という事実を報道し、政権に忖度することなく、この不正をただす検察の動きの意味をぜひ伝えてください。

3  以上にあげた三つのことは、市民が真剣に考えるべき問題であり、公然たる言葉を表明して意見をたたかわすべき事柄です。

 そのためには、大きな影響力をもつテレビというメデイアがいま議論すべき事項(アジェンダ)として、ニュース、ワイドショーなどで、事実に基づく情報を提供し、人々の議論を喚起してください。

 2014年の集団的自衛権の閣議決定、2015年安保法制(戦争法)が国会を通った前後から、テレビは不気味と言っていいほどこれらの問題に沈黙を保ち、あるいは横並びで同じ報道を行ってきました。その姿勢をぜひ変えてください。

4  私たちはなんとかしてこの状態を変えたいと考えています。

 映像のインパクトとともにお茶の間に流れるテレビジャーナリズムの影響はまだまだ見過ごせません。そのため私たちテレビジャーナリズムの可能性を信ずる視聴者はテレビ各局の経営者や現場のテレビジャーナリストとの真摯なデイスカッションを呼びかけるものです。

 そのため、テレビ各局への要望、シンポジウム、その他憲法と法律に定められた権利を行使するなど多彩な活動への取り組みを進めます。